子猫の保護について|注意点と当院の取り組み

令和4年度の環境省の資料によると、全国で所有者不明の猫の引き取り数は20,842頭で、そのうち離乳していない子猫は17,483頭に上ると報告されています。これは自治体に引き取られた頭数ですので、実際の数はさらに多いと考えられます。

猫の飼い主様の中には、こうした子猫を保護して新しい家族として迎え入れる方が多くいらっしゃいます。ブリーダーやペットショップから購入する場合とは異なり、保護猫を迎える際にはいくつかの特別な注意が必要です。

今回は、保護猫をお迎えする場合の対応方法、よくある健康問題とその対処法、当院で行っているミルクボランティアの取り組み、そして注意すべき子猫の病気についてご紹介いたします。

■目次
1.保護直後にすべきこと
2.子猫の年齢による対応の違い
3.よくある健康問題と対処法
4.ミルクボランティアについて
5.知っておきたい子猫の病気~FIP(猫伝染性腹膜炎)~
6.まとめ

保護直後にすべきこと

子猫を保護する状況はさまざまですが、ほとんどの場合、野外で見つけることが多いでしょう。外には野生動物や車など、子猫にとって危険なものがたくさんありますので、まずはご自宅などの安全な環境を確保することが最優先です。

また、子猫が外にいる間に何らかの病気にかかったり、事故に遭ったりしていることも考えられます。そのため、安全な場所に移したら子猫の体調を簡単にチェックしましょう。
具体的には、「目やにが出ていないか、体温が正常か、ケガをしていないか」を確認するとよいでしょう。ケガで出血している場合や体が冷たくなっている場合は、緊急を要するため、すぐに動物病院にご相談ください。

子猫の年齢による対応の違い

保護した子猫は年齢もさまざまです。
年齢ごとに必要な食べ物やできることが異なるため、それぞれに応じた対応が必要です。

<生後間もない子猫(~生後3週間)>
この時期は目が開き始めたばかりで、自分で歩くことがほとんどできません。また、フードをうまく食べられないので、人の手でミルクを与える必要があります。
その際、ミルクは人間の赤ちゃん用ではなく、必ず猫用のものをご使用ください。

<離乳期の子猫(生後3週間~2カ月)>
この時期になるとよちよちと歩き始め、歯も生えそろってきます。ミルクから離乳食用のキャットフードへと、徐々に切り替えていきましょう。
ただし、まだ消化機能が十分に発達していないため、栄養価の高いフードを少量ずつ何回かに分けるか、お湯やミルクでふやかして与えることが大切です。

<成長期の子猫(生後2カ月~)>
この時期になると活動的になり、たくさん栄養が必要になります。子猫用のフードを十分に与え、健康な成長をサポートしましょう。

よくある健康問題と対処法

保護した子猫が健康に問題を抱えているケースは多々あります。ここでは、当院でよくご相談いただく例とその対処法をご紹介しますので、参考にしてください。

<外部寄生虫(シラミ・マダニ)がついている>
外部寄生虫がついている場合は、まず家族や他のペットと接触しないように専用のスペースでケアしましょう。治療には駆虫薬が必要になります。

<目やにがついている>
目やにが出ている場合、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスなどの感染が考えられます。
目やには、温めたガーゼやコットンで目を優しく拭いてあげてください。

<栄養不良、衰弱している>
栄養不良や衰弱している子猫は、早急に栄養を補給する必要があります。弱っている子猫は自分から食べられないことが多いため、ミルクや流動食をスポイトで少しずつ与えましょう。特に衰弱が激しい場合は体温が下がることがあるので、タオルや湯たんぽで体を温めてください。

これらの状況は子猫の命に関わることもあるため、ご自宅で応急処置をした後は必ず動物病院を受診してください。

ミルクボランティアについて

当院では、保健所に保護されて授乳が必要な子猫を引き取っています。獣医師が診察し、哺乳瓶でミルクを飲めることを確認した後、子猫のお世話をしてくださるミルクボランティアを募集しています。ミルクボランティアの方には、里親の方に引き渡すまで(生後2カ月頃まで)のお世話をお願いしています。

ミルクボランティアになるためにはいくつかの条件がありますが、初めての方でも安心してご登録いただけるよう、当院がしっかりサポートいたします。詳細は以下をご覧ください。

ミルクボランティアと里親募集 | 御代田町あさま動物病院 (asama-animal.jp)

なお、個人的な犬や猫の引き取りは受け付けておりませんので、ご了承ください。

知っておきたい子猫の病気~FIP(猫伝染性腹膜炎)~

子猫の病気で特に注意が必要なのが、猫伝染性腹膜炎(FIP)です。FIPは1歳未満の子猫に多く見られる病気で、かつては有効な治療法がなく、致命的な病気として知られていました。
しかし、最近ではさまざまな治療法が報告されており、当院でも治療が可能になっています。

まとめ

子猫を保護する際に最も大切なのは、その命を守ることです。特に栄養不足で衰弱している場合は、早急に動物病院に連れていき、適切な手当を受けさせましょう。

また、子猫を保護する機会がない場合でも、ミルクボランティアとして保護活動や譲渡活動に貢献することができますので、ぜひご登録をご検討ください。

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