猫の慢性腎臓病(CKD)について|高齢猫に多い病気

猫の慢性腎臓病(CKD)は、高齢の猫でよく見られる疾患の一つです。
一度損傷した腎臓の機能を元に戻すことはできませんが、適切な管理と治療を通じて、愛猫の生活の質を高め、寿命を延ばすことは可能です。

今回は、猫の慢性腎臓病(CKD)について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

症状

猫の慢性腎臓病は進行性の疾患で、初期段階では症状が見られないことがあります。
しかし、病気が進行するにつれてもっとも見られる症状は多飲多尿。つまり異常に多くの水を飲み、その結果として尿の量が増えることです。これに加えて、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状が現れ始めます。
末期には、痙攣や神経過敏といった神経症状が現れることもあります。

原因

原因は多岐にわたりますが、多くの場合、加齢に伴う自然な退行過程とされています。
なお、若い猫でも慢性腎臓病になることがあり、下記のような二次的な影響が考えられます。

先天的な腎奇形や尿結石症
ウイルス感染症や高血圧
腎臓にダメージを与える薬の使用
腎臓の感染症や腫瘍

また、遺伝的要因も泌尿器系疾患の重要な原因の一つであり、特にヒマラヤンペルシャといった特定の猫種では、多発性嚢胞腎の発症が一般的です。
この状態は、腎臓内に多数の嚢胞が形成されるもので、腎臓の機能低下を引き起こし、結果として慢性腎臓病へと進行することがあります。

診断方法

まず身体検査で、猫が脱水状態にないか、体重が減少していないかを確認します。また、腎機能が低下すると血圧が上昇しますが、高血圧の状態は腎臓にさらに負担をかけるため、血圧の測定をして高血圧かどうかを確認します。

さらに慢性腎臓病の診断を確定させるには、以下のような詳細な検査が必要です。

血液検査

腎臓の機能を評価するためには、血液検査が不可欠です。慢性腎臓病ではほとんどの場合、血中のクレアチニンや尿素窒素(BUN)、SDMAの値が上昇しますので、これらの値が高いと、腎臓が十分に機能していない可能性があります。
その他、リンやカルシウム、カリウムなどの数値にも注意が必要です。

尿検査

腎臓の濾過能力をチェックし、蛋白尿や他の異常がないかを確認します。加えて、 尿比重を測定し、腎臓の尿濃縮能を評価します。当院では特にUPCの検査を積極的に行っております。

エコー検査(超音波検査)、レントゲン検査(X線検査)

腎臓の大きさ、形、内部構造を詳細に視覚化します。これにより、腫瘍や結石、その他の異常が原因で腎臓病が進行しているかどうかを判断できます。

これらの検査によって腎機能の状態を総合的に評価し、病気の進行具合を把握します。

治療方法

治療は病気の進行を遅らせ、猫の生活の質を向上させることを目的としています。
治療方法は病気の段階や猫の全体的な健康状態によって異なりますが、以下のような方法が一般的です。

食事療法

腎臓病専用の療法食を与えることで、腎臓にかかる負担を軽減できます。この療法食は、主にタンパク質、リン、ナトリウムの含有量が特別に制限されているため、腎臓の機能を保護し、さらなる損傷のリスクを減少させるのに有効です。しかし、腎臓療法食の無闇な開始は逆に猫の寿命を縮める可能性があるため、注意が必要です。そのため、獣医師と相談することを推奨します。

FGF23の計測

早期の腎臓病の場合、FGF23(線維芽細胞成長因子23)の計測を行い、療法食の開始タイミングを判断することがあります。FGF23の高値は、腎臓病の進行を示唆するマーカーとして注目されており、当院でも計測導入を検討しております。

脱水治療

脱水症状がある場合、適切な水分補給や点滴治療が行われます。これにより、腎臓の機能をサポートし、体内の毒素を効率的に排出するのを助けます。

薬物療法

蛋白尿が確認された場合、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)やACEI(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)が投与されることがあります。これらの薬剤は、腎臓の保護に役立つ可能性があります。
また、腎性高血圧の管理には降圧剤が使用されることもあります。

予防法やご家庭での注意点

慢性腎臓病は完全に予防することは難しいですが、定期的な血液検査や尿検査により、早期発見・早期治療に繋げることが可能です。

愛猫の健康と快適性を維持するために、日常生活でのいくつかの注意点があります。
まず、水分摂取を促すことが非常に重要です。猫は水をあまり飲まない傾向がありますので、新鮮な水をいつでも飲めるように家の複数の場所に水入れを設置することで、愛猫がより多く水を飲むよう促しましょう。加えて、塩分量が高いおやつや人間の食事を与えないようにしましょう

それから、肥満は猫の腎臓病のリスクを高める要因として知られています。そのため、愛猫が健康的な体重を維持できるように、定期的な運動とバランスの取れた食事を心がけることが大切です。

まとめ

慢性腎臓病は、特に高齢猫に多く見られる疾患で、一度発症すると完治することは難しいです。しかし、適切なケアと管理を行うことで、愛猫の健康を維持し、病気の進行を遅らせることができます。
飼い主様は愛猫の日々の行動や体調の変化に注意を払い、異変を感じたらすぐに獣医師に相談してください。

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