犬や猫の甲状腺疾患について|犬と猫では真逆の症状?

甲状腺とは喉にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンを分泌し全身の代謝を活発にする働きを持っています。
この甲状腺に問題が起こると、甲状腺ホルモンの分泌が正常に働かなくなるため体に様々な異常や症状が引き起こされます。

今回は、犬と猫の甲状腺疾患について解説します。

■目次
1.犬と猫の甲状腺疾患とは
2.甲状腺疾患の特徴
3.症状
4.甲状腺疾患の治療法
5.予防法とご家庭での注意点

犬と猫の甲状腺疾患とは

甲状腺疾患とは、甲状腺に異常が起こることで引き起こされる病気を指します。
主に中高齢の犬や猫で見られ、犬は「甲状腺機能低下症」が多く、猫は「甲状腺機能亢進症」が多く見られます。

甲状腺疾患の特徴

<犬:甲状腺機能低下症>
5歳以降の中高齢の犬で多く見られる内分泌疾患で、甲状腺の組織の破壊や萎縮、腫瘍化など甲状腺自体の問題や、脳の下垂体や視床下部(甲状腺を刺激するホルモンを出す臓器)に腫瘍などの問題が起こることが原因となり、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが少なくなることで発症します。また、副腎皮質機能亢進症など他の病気によって発生することもあります。
甲状腺ホルモンが減少することで体の代謝機能が低下するため、元気がなくなる、体温が低下する、体重が増加するなどの様々な症状が現れます。

<猫:甲状腺機能亢進症>
特に10歳以降の高齢猫で多く見られる内分泌疾患で、甲状腺の細胞の異常な増殖によって引き起こされます。
甲状腺ホルモンの分泌が増加することで代謝機能が亢進し、攻撃性が増す、落ち着きがなくなる、食欲が増すが痩せるなどの様々な症状が現れます。


猫の甲状腺亢進症についてはこちらでも解説しています

症状

犬と猫の甲状腺疾患では、それぞれ次のような症状が見られるようになります。

<犬:甲状腺機能低下症>
食欲が低下するのに太る
・ぼーっとしていることが増えた
運動嫌いになる
・低体温になる
体幹部や尻尾が脱毛する
皮膚が黒くなる(色素沈着)
・悲しそうな顔つきになる(顔の皮下に水が溜まりむくむため) など

<猫:甲状腺機能亢進症>
食欲が増すがやせ細る
・異常に甘える
イライラする、攻撃的になる
落ち着きがなくなる
多飲多尿になる
・毛艶が悪くなる
・嘔吐や下痢が見られる など

愛犬や愛猫にこれらの症状が見られた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

甲状腺疾患の治療法

<犬:甲状腺機能低下症>
甲状腺ホルモンを補充するため、ホルモン剤を内服する治療を行います。
また定期的に甲状腺ホルモン濃度を測定し、その都度薬の投与量を検討します。甲状腺ホルモン濃度の測定と投薬は生涯継続する必要があります。


<猫:甲状腺機能亢進症>
甲状腺ホルモンの合成を抑制する抗甲状腺薬を内服し、また甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を制限した療法食による食事療法を行います。この内科的治療は生涯継続する必要があります
さらに、甲状腺に悪性の腫瘍がある場合や内科的治療に反応しない場合には、甲状腺を摘出するための外科手術を行うこともあります。当院では手術は推奨していませんが、症状のコントロールが難しい場合には検討します。
また注意点として、甲状腺機能亢進症の治療を行うと隠れていた腎臓病が顕在化することがあります。そのため、甲状腺機能亢進症の治療を開始する際には、腎臓への影響を考慮しながら慎重に治療を進める必要があります。

予防法とご家庭での注意点

残念ながら、甲状腺疾患を確実に予防する方法はありません。そのため、病気の早期発見と早期治療が非常に重要となります。

犬では発症の多くなる5歳を、猫ではシニア期に入る7歳を過ぎたら、定期的な健康診断で甲状腺ホルモンの濃度を測る血液検査を追加することをお勧めします。
特に犬では、甲状腺機能低下症を発症していても臨床症状が見られないこともあるため注意が必要です。

また、猫では甲状腺機能亢進症の治療を行うと、それまで現れていた多飲や心拍数の増加などの症状が改善されて全身の血流量が下がるため、腎臓病が現れるリスクがあります。治療後は腎臓の数値の悪化や腎不全の症状が現れないかなどを注意深く観察するとともに、適切な飲水量を確保するなど、毎日のケアが大切です。


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